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三原淳雄
 
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1999年07月13日
三原 淳雄

市場の効用
 

 昨年10月時点での東証時価総額は約240兆円にまで減少した。 山一証券にはじまった日本の金融システム不安の顕在化が、10月の長銀の破綻でピークに達し、結果として株価が大きく下げたのが原因である。

 そのため金融システム安定化がその後急ピッチで進められ、60兆円の安定化資金、20兆円の保証協会による緊急融資などが行われることになったのはご案内の通りである。 その結果、株価は昨年10月を底に急速に回復し、時価総額も約390兆円にまで回復してきた。 89年末の約600兆円に比べればまだやっと半分強といったところだが、それでも約150兆円もの時価総額の増加が民心に与えた影響は大きい。

 これは当たり前のことなのだが、懐が暖かくなれば気分も楽になる。 企業も個人も久し振りに資産が増加したのだから、ほっとするのもうなずける事であり、現実にダイヤやベンツ、高級マンションといったところには既に好影響が出ているとか。

 いつの不況でも同じなのだが、まず実体経済が回復する前に市場が上がりはじめ、そこでキャピタルゲインを得た層がまず消費をはじめるという循環となる。 また株式市場も反騰の初期段階では金持ち層が投資をはじめるので、よく「金持ち相場」と呼ばれるが、今回の反騰も値嵩株が中心になっている姿をみると、先行きをやや楽観的に見てもいい材料が出てきたようだ。

 もちろんここから一直線で良くなるはずもないし、マクロで回復しはじめるのはまだまだ先の話だろう。 しかし、マクロではまだ暗いなかで個別企業の物色が行われはじめたことは90年代での初の出来事である。 ここは市場が一体何を告げようとしているのかを、しっかり見定める時がきたと判断している。 時価総額の増加基調に注目することだ。