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2000年07月19日
三原 淳雄

 
またも出ました小さな正論
 

 「喉元すぎれば熱さ忘れる」とは将に今回のそごうを巡る様々な動きであろう。

 例によって小さな正義感に溢れたマスコミが、黄門様の印篭にも似た公的資金を楯にとって国民感情を煽り、結局ツルならぬカメの一言によって事態はどんでん返しとなった。

 これで結局公的資金の負担額は大きくなるのだが…。 不思議なのは誰も得をしない話に全員が国をあげて大騒ぎをすることである。 そしてその大騒ぎのなかで忘れられてしまうのが、其の責任の所在なのではないだろうか。

 そもそもそごうの破綻に旧長銀が絡んでいなければ、主要銀行とそごうの間で済んでしまう問題だったのだから、ねじれの発端は長銀の処理に問題があったことになる。

 その長銀が破綻に到った道筋を考えると、「19行は一行たりとも潰さない」という面子にこだわり、問題を先送りしながら隠しつづけてきた行政にも大いに責任はあったのは確かである。 政策や行政の失敗に対して、当事者たる金融政策担当者の誰れ1人として責任をとっていないし、責任の所在すら明確にすることなく問題をうやむやに処理しようとした結果が、今回のそごうの破綻なのであり、そごう1人を悪者にしてすむ問題ではあるまい。 これまでも民間は経営責任を問われて捕まったり、倒産したりと否応なしに責任をとらされているではないか。

 今回のそごうの問題は、改めてこれまでの政策を問い直し責任をハッキリさせる好機と捉えるべきであろう。

 このあたりがあいまいだから、市場は当然疑心暗鬼となる。 改革などは掛け声ばかりで、実際に行なわれている事は相も変わらぬ密室政治で、出てくる対策は党利党略、省利省略だとあれば、先行き楽観して株など買えるはずもあるまい。

 そのため折角芽生えかけていたバリュー株への投資気運もすっかり消えてしまい、7月18日は1日だけで約10兆円もの時価総額が消えてしまった。

 小さな正論の恐いところは、それがもたらす大きなリスクに対しての配慮が全くない点であり、過去にも94、96、97年と何度も同じことをやっているのに、まだ懲りずにやってしまいそうなことである。

 誰も得をしないことに血眼になるより、いまは皆がどうすれば得をすることが出来るのかを考えなければならないのではないだろうか。 株や地価が下がって誰かが得をするとすれば、安値を虎視耽々として狙ってる外資ぐらいだろう。 またも長銀の轍を踏むのではないかと、寒心に耐えない。