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2000年09月01日
三原 淳雄

 
亡国税制を憂える
 

 市場こそ経済の活力の源泉という信条を持つ身として、来年4月から導入予定の株式売買益の申告分離課税に対してしつこく反対してきた。 やっとこのごろになって政治家や金融庁あたりから見直しの動きがでてきたのは何より御同慶に耐えないが、何故この申告分離課税が危険な税制であるかについて、あらためて整理しておきたい。

 まず何故株式だけが申告分離課税となるのか、他の金融商品との整合性が全くみられない。 加えて他の金融商品が源泉徴収で20%の税率であるのに対し、株式の売買益は申告分離課税で26%なのか、その根拠が全く見当たらない。 しかも損失が出た場合には自己負担で他の所得との合算は一切出来ないのでは、リスクを覚悟して株式に投資しても、うまくいってもペナルティ的な税金、まずくいけばすべてそれは丸損ではそうでなくてもリスク馴れしていない日本の投資家の大半は株式市場から遠ざかるのは確実だろう。

 「とり易いところからとる」といういまの税のあり方は、とても市場経済のあるべき姿とはほど遠い。

 市場を活性化させることこそ当局の使命であり、市場が活性化すれば自然に税収は増えてくる。 このモデルはレーガン大統領がとうの昔に実践してみせてくれているのだから、まず彼の行ったように財政赤字削減のために思い切った減税や市場振興策を行うのが究極の財政赤字対策なのではないか。

 本末転倒とは将にこのこと。 折角金の卵を生み始めたニワトリを、あっと言う間に絞め殺すのは愚策としか言いようがない。

 また26%という税率がどうして出てきたのか、それについての根拠も全くない。

 損失は100%投資家持ち、益の26%は税金という発想はどこからでてきたのだろうか。 こんなことを考えた連中の頭の中をのぞいてみたいと思うのは私だけではあるまい。 そもそも株式投資にはリスクがつきものなのだから、こんなペナルティ的な発想ではなく、ぜひやってみたいという気を起こさせるようなインセンティブをつけることこそ正しいのである。

 高齢少子化、膨大な財政赤字という現状をみれば、将来に備えて株式市場を利用して株式市場の助けを借りて国民が自衛をしなければならない時に、こんな税制を導入されたのでは金持ちはどんどん国外へ逃げるだろう。

 「巨泉」という本が売れているそうだが、既に海外移住を考えている人達が増えていると言う事なのだろう。 国を売る人がでてくるようでは、よほど政府も当局も考えを新たにして、新しい国づくりを真剣に打ち出すしかあるまい。 こんなちまちました税金ばかりしか考え出せないような政治家や官僚はもういらないのである。