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2001年04月12日
三原 淳雄

 
前車の轍を再び踏まないためには
 

 いま盛んな不良債権処理を巡る騒ぎを見ていると、あのバブル潰しの頃を思い出す。

 まるで瞬間湯沸器のように、すぐカッとなってすぐ忘れる日本の民族性が、またも出てきたようだ。 おまけに極めて短絡的で楽天的である。 加えて前を向いて走るのは得意だが、後には興味がない。 つまり歴史を参考にしないきらいもある。

 そもそも日本を苦しめている不良債権問題の根は、90年に始まった拙劣なバブル潰し政策のためなのである。 誰が言い出したのかは不明だが、当時はバブルが悪とされ、NHKなどは地価の高騰が諸悪の根源とばかりに「土地は誰のものか」という特集を三晩連続で放送し、バブルさえ潰せば経済は正常化するといった誤った印象を国民に持たせてしまった。

 冷静に考えれば副作用なしにバブル潰しが出来るはずもないのに、その副作用には全く触れなかったために、視聴者の多くがその副作用で我が身が苦しむことになるとは、夢想だにしていなかたのではないだろうか。

 市場にはリスクがあるからこそリターンもある。 そのリスクを避けるには、常に市場は正常に機能していなければならない。

 つまり危ないと思った時に、いつでも市場から退出できる流動性が必要なのであるが、諸悪の根源とされた不動産市場は、総量規制などの政策によって流動性が失われ、市場の参加者たちはいざという時の逃げ口を塞がれてしまったのである。

 売るに売れない買うに買えない市場はもはや市場ではない。 売り手ばかりで買い手がいないのだから、不良債権の処理など出来るはずもない。

 かくして足りなかったはずの土地はいまや余りに余り、売れない担保を抱えた金融システムはガタガタになってしまったのである。

 不良債権が日本の大問題であることは言うまでもない。 しかし、いまの風潮を見ていると、また当時と同じように不良債権さえ処理すれば、経済は正常化するという論調が支配的であり、お気楽な学者やエコノミストなどは簡単に痛みを覚悟して処理すべきと唱えているが、問題は処理に伴う痛みをどうするかなのである。 彼らの主張通りにことが行われれば、倒産、失業の山となりデフレはますます厳しくなるだろう。

 痛みを柔げながら不良債権処理を行うには、株式や不動産など資産市場の活性化から始めなければならない。 まず市場を活性化することが不良債権処理に不可欠なのである。 順番を間違えないことだ。