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2001年12月07日
三原 淳雄

 
悪材料の揃い踏み、そこがチャンスかも
 

 喉元過ぎれば熱さ忘れる、ではないがいまの日本経済の姿は、忘れてしまった感のある98年の姿と良く似てきた。 というよりはむしろもっと悪くなっている。

 98年と言えば思い出されるのは、97年の山一証券や北拓銀行の破綻に次いで、長銀や日債銀が遂に引導を渡された年であり、株価もバブル以後の最安値を更新した年でもある。 国会は長銀の処理を巡り右往左往した挙句に、金融システム支援策や中小企業への緊急融資策などが急遽設けられたのはご記憶の通りである。

 そこで改めて当時の日本経済を振り返ってみると名目GDPは514兆円、実質成長率はマイナス0.6%、卸売物価は95.0、失業率は4.2%で294万人、貿易黒字は16兆円、そして株式市場の時価総額は242兆円、円は1ドル140円だった。 しかし肝心な国債の格付けはまだトリブルAだったのである。

 その国債の格付けが再びここにきて格下げされることになり、とうとうダブルA、Aが3つだったものが2段階下がって2つになってしまった。 イタリアと同じでベルギーやフィンランドより格下である。

 そこで改めて98年と現状を較べてみると、名目GDPは500兆円でマイナス14兆円、実質成長率は予想ではマイナス1%を大きく越えそうだし、名目成長率にいたってはマイナス10%になるという声もある。

 失業率は5.3%で1%増えて257万人、貿易黒字も半分以上減って6〜7兆円となりそうである。

 小渕政権の時には一瞬500兆円近くまで盛り返した株式の時価総額も再び300兆円そこそこ。 98年より40兆円ぐらいしか増えていない。 これでは日本は一体何をやっているのだと、国債を格下げされるのも致し方なかろう。

 ここまで悪くなってどん詰まりまで追い詰められないと変われない日本の特質を考えれば、いよいよ銀行や企業は自力で変わらないければならない最終段階に入ったと言えるだろう。

 これほどマクロ面での悪材料が揃えば、次は何とか自力で生き残るしか方策はない。 変化の兆しはこんな時に出てくるものであり株には変化が何よりの材料だから、投資家にとってはむしろ千載一遇のチャンスが近づいているのかもしれない。