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三原淳雄
 
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2003年02月05日
三原 淳雄

 
森よりも木を見る。銘木探しのチャンス
 

 長期金利が98年10月につけた最低水準を下回り、0.75%となって過去最低の利回りとなった。 これは人類史上最低の利回りでもある。

 10年ものの国債をいま買うと、10年間は0.75%の利回りにしかならないのに、それでもいいという買い手がいるのである。 言い換えれば10年後の日本経済も良くなっていないだろうから、敢えてリスクをとって他に投資するより安全な国債にでもしておいた方がいい、と考える投資家が増えている事に他ならない。

 景気の先行きに明るさを感じる人が増えれば、資金を借りてでも投資をするので資金需要が高まり、つれて景気も上昇し金利も高くなると、これまで経済学が教えているところなのだが、いまの日本ではいくら日銀がおカネをジャブジャブにしても、民間の需要が冷え切っているために、借り手は国しか居ない。 余裕のある企業や家計は借りるよりはセッセと借金返済しているし、借りたい企業には危なくって貸せない。 かくして余った資金は国債市場に向かい、国債価格は上昇し金利は下がる一方となる。 経済学では教えない異常な状態である。 しかし学問とは無関係に債券市場は右肩下がりの日本経済を素直に反映していると言えるだろう。

 景気は腰折れが確実視されているし、物価下落も止まらない。 株価も当然不安定になるのでそちらにも資金は向かわない。 円高は債券に有利だし、多少円安になってもデフレ脱却はまだ無理。 それなら債券でもといった動きを債券市場が素直に反映した結果が史上最低の利回りとなったのである。 他にも世界的なデフレ傾向やイラク問題など不安定な動きもあるので、リスクを嫌う資金が「質への逃避」傾向を強めていることもある。 一方でここまで債券価格が上昇(利回りは低下)してくると、これは債券バブルではないか、暴落するリスクはないのかという懸念も出てくるが、その最大の懸念材料であるインフレなどにはどうにもなりそうもない。 多少の動きはあっても大きな資金の流れには変化は当分起きないだろう。 金利の低下は景気の先行きの悲観の表れでもある。

 しかしこれはマクロの現象であり、個別企業には悲観のなかで力をつけている企業も多くあるはず。 増配余力がある配当利回りの高い銘柄の優位性が買われる場面も期待出きる。 ここは森よりも木を見て銘木探しをする時だろう。