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2003年04月23日
三原 淳雄

 
危機感の欠如こそが真の危機
 

 このところやたらTVなどで無責任に言い放しの輩が増えてきたようだ。景気の低迷や株価の下落はイラク問題のためとか、米英は第2のベトナム戦争の泥沼にはまるとか、したり顔でコメントして世の中を迷わせた連中は、これからどんな顔をして言い訳するのだろうか。楽しみである。金融担当大臣などはイラク戦が短期終結に向かうと、今度はアメリカ経済が不安だから株が下がるとまた言い訳をする。その当人が政策担当の中核にいる。株価の下落で日毎財産をすり減らしている国民にしてみればたまったものではない。


 こんな日本の風潮にぴったりマッチして出て来た流行語が「なんでだろう」だが、国民の士気も株価も景気も下落しているのに、そのことに危機感すら感じていない政府は「なんでだろう」と思うのは私だけではあるまい。景気や株価が下落しているのはすべて小泉政権の失政によるものであり、イラク戦争やアメリカ経済のせいにすべきものではない。

 自ら招いた惨状を正視することなく、おまけに危機感すら感じていないからこそ、日経平均は八千円を割れ込んでしまったのである。「なんでだろう」と真剣に考えるのが政府の仕事のはずである。今回の危機の深刻さは株価の下落が保険や年金を破綻の難に追い込み、株を持っているいないにかかわらず全国民に深刻
な影響が出始めたことである。 加えてこの期に及んで銀行の持株制限の強化や、年金の代行返上などを強行しているために、何が何でも売らねばならぬという売り手ばかりの市場となり、いまや買い手は日銀と自社株買いだけになってしまっている。ところが狼少年ではないが毎年やってくる危機騒ぎに馴れてしまった国
民には、いまや諦めムードすら漂って、この大変な危機に際して人々にも全く危機感がみられない。

 危機を正しく認識してこそ対応策も出てくるのだが、政府も国民も危機感が見られないが、これこそが最も深刻な危機なのである。日本が元気だったころは、たとえば天下の松下の株価が1株当り純資産の約半分のレベルまで下げれば、個人を中心にどこからともなく買いが出てきたものだが、今回はそれも見られない。
やはり行くところまで行かないと危機感は出てこない国なのだろう。株は買わなければ上がらないのである。いまの松下のような安値をじっくり拾っているような人が、ある意味では危機感を持っている真の愛国者なのだろう。