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2003年6月13日
三原 淳雄

 
折角の株価上昇を無駄にするな
いまこそ政策転換を
 

 市場はいつも合理的な動きをするわけではないと当欄でも繰り返し申し上げているように、極端な方向に動いた後は必ず揺り戻しがくる。このところ東京市場も久方ぶりに上げ相場が続いているが、これは極端な弱気の結果日経平均が7,600円台まで売り込まれた反動であろう。市場で勝つ鉄則は市場が不合理な動きになっている時に、如何に合理的に考え行動出来るかであり、日経平均が7,600円台にまで下げた時に、森を意味する日経平均の動きに惑わされた人と、森ではなく個々の企業の真の価値と株価の乖離を見抜けた人とでは、これまでのたった1,000円程度の上げでも大きな差が出たはずである。この森ではなく木を見る態度はまだしばらく必要だろう。何となれば今回の戻り相場は政策転換や好材料に支援されたものではなく、自律反発の域を出ていないからである。「りそな」の騒ぎで取り敢えず目先の危機が封じ込まれただけで、国内の状況は全く変わっていない。日本が超悲観で下げた後でタイミングよくNY市場が上昇し、円高に歯止めがかかり、企業業績が好転したために株価が上昇したのであり、日本経済のファンダメンタルズの悪さに変わりはない。

 むしろなまじ株価がここで少し反発したことによって、また例によって政治や行政の危機感が薄れてしまう方が心配になってきた。

 景気の先行きは不透明だし雇用も所得もまだ減少を続けているし、地価も下げ止まってはいない。デフレ解決のための具体策などどこにも見当たらない。ただ雇用や所得の減少、つまりリストラという痛みのうえに企業業績の回復が出て来たので、株価は反発してきたのである。事実この1,000円強の上昇の過程でも本邦投資家は個人も法人も売り越しであり、買い越しは外国人だけ。

 それも売りの買い戻しやポートフォリオの調整による買いが主力であり、本気で日本を買っている様子は見られないので、自ら上昇には限度があるだろう。

 本来であればいまのようなほっと一息ついた時に、景気対策なり証券税制なりで政策が後押しするべきなのだが、これまで通りきっとこれで安心して手抜きとなるのではないだろうか。だとすると折角の反騰も頭打ち反落し、また危機が叫ばれるという繰り返しになりかねない。9月危機に備えるためにも、ここで小泉内閣は政策転換をすべきなのだが、きっと無いものねだりに終わりそうである。