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2003年6月26日
三原 淳雄

 
多様化目立つ買いエネルギー
 

 株価上昇が社会に与える影響は、読者の皆様が考えているよりかなり大きいだろう。

 今回の上昇のキッカケは外国の株高による外国勢の日本株買いだが、そのおかげで東証の時価総額は230兆円から266兆円へと36兆円も増加した。銀行の保有する株式も日経平均が8,800円以上になるとプラスになるそうだから、株高は若干なりとも銀行の足腰を強くするし、金融システム不安を多少でも柔らげる。低水準での株価の上昇だから資産効果による経済刺激は限定的だろうが、人心が明るくなるという心理的な効果もあるし、運用に苦しむ年金や保険の肩の荷も少しは軽くなるだろう。日本経済の実体は変わらないなかでの株価の上昇だから、疑心暗鬼に陥る人も多いと思われるが、市場とは得てして人心とは逆の動きをするものであり、理屈では割り切れないところが投資家を魅了するのである。

 市場参加者の全員が同じ考えなら、売りも買いも成立しないのが市場なのであり、全員一致でないところが面白いのである。今回の反騰はその意味でもまことに興味深いものがある。足元の日本経済は少しもよくなってないのに上げてきたのは何故か、改めて考えてみるのも一法だろう。

 今回の上げは場末の映画館によくある3本建て興行と同じようなもので、買ってきたエネルギーには大きく分けて三通りあるようだ。

 ひとつは外国勢の日本株ポジション調整の買いで、買っているのは国際優良株が中心。二つ目は「りそな」に端を発したりそなグループの関連への買いで、これは如何にも日本的なモラルハザード相場、問題企業が潰れなくなったという安心感による買いであり、最後はババ抜き相場で低位株の日計り狙いのネット投資家による相場の三通りに大別出来る。

 そのためキャノンやトヨタなどが上げている一方で、りそなグループやその関連及び低位株が物色され、100円割れ銘柄は激減しとうとう50銘柄を割るという興味深い展開となっている。ただ気になるのは依然として本邦投資家は法人も個人も売り越しであり、買いは圧倒的に外国勢が多い。いつも安値は外国勢に拾われてきた轍をまた踏みそうである。

 本格的反騰に入るには日本の投資家に買い越してほしいのだが、まだ疑心暗鬼のようだ。だとすればこの相場、案外長持ちするのかも知れない。