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2003年10月17日
三原 淳雄

 
円高は株高のシナリオを崩すか
 

 株式市場は本年4月末から9月中旬までの4ヵ月半、週にして21週間上昇を続け一時は1万1,000円を回復するという目覚しい上昇となった。

 この間日経平均は7,607円から11,033円まで45%上昇し、ドル換算での上昇率は55%となって米国のナスダックの上昇率50%をも上回った。いち早く日本株を買ってきた外国勢には笑いが止まらないであろう。

 この上昇が日本経済のセンチメントを好転させた影響は大きく、春ごろまで日本を覆っていた悲観論は後退し、実体経済のいたるところに好転の兆しが出はじめている。それも当然であり一時は220兆円まで減っていた株式の時価総額が、この間に100兆円以上も増加し330兆円にまで回復してきたのだから、下手な財投などよりはその効き目は大きいはずである。

 市場の効用とは、かくもおおきなものなのだが、何故か政、官にはその意識がまるでない。下げた時は一喜一憂せず、上がればわが手柄みたいな発言が相次ぐが、これはとんでもない話で政、官のあまりの無策ぶりに業を煮やした民間の努力が実り始め、折からの世界的な株高の支援もあって株価は戻ってきたのである。

 この政、官の無策下での株価の上昇に水を差すかのように、ここにきて急速に円が高くなってきた。

 外国人買いは2004年3月の企業収益が15〜20%伸びるという前提があり、既に株価にはかなり織り込まれている可能性がある。またこの予想の前提となっている為替レートは118〜120円であり、これを大きく超える円高は収益の下方修正につながる要因になりかねない。

 「改革本格化内閣」と自画自賛してスタートした小泉内閣だが、この自己宣伝指向の極めて強い内閣にとってここでの円高は、大きな試金石となってきた。ブッシュ大統領の訪日ではイラクへの強力を人とカネの両方で求められ、国内でも総選挙というスケジュールは、最近の円高と相俟って市場の撹乱要因となりかねない。

 政府は介入によって円高を阻止する構えだが、勢いのついた市場を介入で防ぐなど容易なことではない。

 これ以上の円高を止めるには内需を活性化するしかないのだが、それが出来なければ株式市場は調整を余儀なくされるだろう。