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2004年2月10日
三原 淳雄

 
市場の関心は為替から金利へ
 

今週末にはフロリダでG7が予定されているが、昨年9月のドバイでのG7とはかなり違う内容の会合になりそうである。

 昨年は世界的なデフレ懸念が根強く残るなかで、世界経済唯一の機関車とされていたアメリカの主張が前面に出て、口先ではドル高政策を唱えながらも、巧妙にドル安へと誘導していったアメリカの作戦が効を奏したが、今回はヨーロッパが高すぎるユーロについて、かなり強硬な態度にでてくる可能性が強い。

 前回は日本の作戦ミスもあった。当時デフレの輸出国とされていた中国に対して、日米歩調を揃えて人民元の切り上げを図るつもりだったのだが、したたかな中国の抵抗に会い敢えなくこの作戦は失敗し、かえって大幅な貿易黒字国である日本の円が高くなるという結果となった。

 あれから半年、ドル安症状がはっきりするなかで、アメリカ経済は順調に回復しているし、ドルにリンクしている人民元の中国は、かつての輸出一辺倒からいまや旺盛な需要を持つ先進国へと変身しつつある。

 アメリカ経済の回復が世界経済回復につながる、そのためのドル安はやむを得ないと、ドバイのG7で想定されたシナリオが、いまやハッキリと現実のものとなってきた。それを受けた先週のFOMC(アメリカ連邦準備委員会)も、低金利の維持は行うものの、この低金利を「かなりの期間」続けるといった文言が無くなっている。いよいよ米国の景気は本格化してきたというサインだろう。

 したがって今週末のG7のテーマは前回の米国のドル安志向による「行き過ぎたドル安、円高の阻止」から「成長を妨げない、長期金利の低位安定」へと変わるのではないだろうか。これまでデフレを警戒しドル安を心配していた市場の関心は、今回のG7をキッカケとして金利の動向へと向かうのは確かだろう。つまりこれ以上の利下げがないことがハッキリすると同時に、むしろ金利がいつ上昇しはじめるかに市場のテーマは移っていく可能性が高い。

 日本の当局による巨額な円高阻止のための介入が批判されているが、意外にも効を奏して2000年のように円高の流れに歯止めがかかるかも知れない。中長期ならそろそろドル建て金融商品をポートフォリオに加えることを考えてもいい時期が近づいているのではないだろうか。