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プロフィール
三原淳雄
 

2006年03月16日
三原 淳雄

性善説と性悪説
 

もう30年以上も前の話しだが、ロスに駐在員として住んでいたことがある。その時に前任者から引き継いだ社宅がかつての静かな住宅街からいつの間にか環境が悪化していて、息子の小学校はガラスは全部破れ、弁当まで盗んで食われるなどひどい状況になっていた。 
 そのため転校させることにしたのだが、そのためにはいい住宅地をさがさねばならない。 
 やっとロスの郊外のパロスバーデスという場所に見当をつけたのだが、なかなか適当な借家がない。ならばいっそ買ってみようと、生来の軽佻浮薄さ、好奇心、成り行き任せというの悪癖も手伝って、いい機会だからついでにアメリカの住宅税制も体験出来るとばかりに、十万ドルの家を購入した。社宅料として貰っていた500ドルに自分で300ドル足せば、毎月800ドルで買える価格だった。頭金の三万ドルは日本の友人から借入れ、ともかく住んでみたのだが借りるのと買うとは大違いで、何と4ベットルーム、5バス、おまけにプール付きで300ドルは還付されて返ってくるので負担は変わらない。映画で見るような生活をはじめたのは良かったのだが、いいことは長くは続かない。 
 豪邸住まいがどう日本に伝わったのかは知らないが、たちまち転勤の辞令が出て泣く泣く売却して帰国した。ちなみに2年住んで11万ドルで売却、税金払ってプラスマイナスゼロ、住んだ経験がいい思い出となった。 
 ちなみにそれは、いまや軽く百万ドルは超すそうだから、いつの場合も逃げた魚は大きい。 
 なぜこんなことを思い出したかというと(思い出したくもない消えた夢だが)昨今の耐震強度偽装問題で感じることが山ほど出てきたからである。ロスで家を購入した際に、アプレーザという、家はもちろんその他の権利関係などをきっちり調べるのが仕事とするプロがいて、当然費用はかっかたが徹底的に調べて貰った。しかしこれは将来何か起きた時の保険みたいなもので、家を購入する時にはプロのインスペクターやアプレーザーを必ず頼むのがあちらでは一般的である。 
 「全ての責任は自分にある、信用できるのは自分だけ」と考えるアメリカ人にとってはごく当り前のコストなのである。 
 ひるがえって今回のマンション偽装騒ぎで感じることは、日本はまだお上頼み、肩書き頼みの国だということである。購入した方々は大変お気の毒だが、国のお墨付き、一級建築士を丸呑みにした結果の被害者と言えなくもない。 
 一方アメリカ人は愛国心は強いが、政府はあまり信用しない。だからこそ合州(衆)国なのであり、政府が国民の味方でなくなったり、もし害になるのだったらさっさと各州は独立出来る仕組みになっている。 
 アメリカ全体が悪い奴はどこにでもいるという性悪説だから、単に資格があるだけでは信用しない。うかつに人を紹介はしないし、もし紹介する場合はきちんとしたリファレンスをつける。そうでもしないと万が一紹介した人間が悪事を働けばつけが回ってくるからである。もちろんどちらがいいかと問われれば性善説がいいに決まっているし、性善説で生きていけた日本に戻って欲しい気持ちも強い。しかし残念ながらいまの日本は油断も隙もない国に変わっているのも事実。 
 ライフドアの株主による訴訟騒ぎなどをみるにつけ、まだまだ甘い考え方が支配的のようだ。自分で勝手に信じて買ってはいけないものを買って、騙されないようにするにはどうすればいいのか、大いに考えさせられる昨今である。