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プロフィール
三原淳雄
 

2008年10月16日
三原 淳雄

錯乱には理性で
 

 人間が錯乱状態に陥った時にするのが「自殺と結婚」だそうだ。つまりまともに考えられなくなっている時は飛んでもない行動に走るのが人間ということになる。 
 結婚なんて理性的に判断すれば、人間の半分は異性なんだから、何も慌てずともまだまだ良縁がありそうなものだが、錯乱状態になればこの人を失うと一生もうチャンスはないと考えるから結婚するのだろうし、結婚なんてまともに計算したら間尺に合うものではあるまい。良妻のつもりが恐妻になったり、産んだ子が飛んでもない奴だったりと、考えれば考えるほどリスクが一杯なんだから。 
 今回のサブプライムローン仕立ての金融商品も、どうやら世界中の金融のプロが安心、安全、ノーリスクと、まるで夢でも見ているような精神状態に陥り、一見ノーリスクがどんな恐ろしいものか、自分の連れ合いを見れば判りそうなものだが、恋は盲目のたとえどうり気がつかなかったらしい。いまや高見の見物で時折御託を並べているあのグリーンスパン親爺のマジックに世界中が手もなく引っかかってしまったようだ。私もかつてTVなどで「ゴールディロックス現象」を解説したことがあるが、ゴールディロックスとは極めてカンフォタブルな状態のことを言う。 
 もともとは熊の留守中に家に入り込んだ少女が温かいスープをちゃっかり失敬し、暖かい部屋で柔らかいベットで寝込んでいると熊が帰ってきてさあ大変、というアメリカの童話の主人公のことである。 
 経済でゴールディロックス現象とは「低インフレ下での持続的成長」であり、ITバブル後の世界は将に低インフレ下での持続的成長を享受していた。新興国は物凄い勢いで成長するし、先進国は新興国への資金提供や資本財の輸出で潤い、おまけに新興国の低賃金は原材料価格の多少の上昇はちゃんと吸収してくれ、先進国はインフレの心配もなかった。おかげで世界中の人が豊かになり、なかでも人口が増えているアメリカでは住宅価格は永遠に上昇し続けると、まるで少女が熊さんのベッドで楽しく夢見ていたのと同じ状況になっていたのである。 
 だから低所得者でもプール付きの家が買え、払えなくなったら鍵を返して出て行けばいいというローンがドンドン貸し出され、住宅を購入した人たちも一瞬の楽しい夢をみることも出来たのである。 
 本来天まで届く木などはあるはずもない。しかしそう思い込んだところが錯乱の錯乱たるいわれだろう。 
 ハーバードやMIT出身の知性も教養もある人たちが集団で錯乱すると何と恐ろしいことになることか。これでは自殺や結婚とまるで精神状態は変わらないではないか。 
 おかげで世界中の株式市場から三千兆円も吹っ飛んでしまった。実体経済である世界のGDPが約5千兆円だから、ほぼその6割まで落ち込んでしまった。GDPより時価総額が上下に四割もぶれるようなことは過去に多分例はないだろう。大恐慌の時はGDPも半分になったのだが、今回はいまのところGDPの目減りは株ほどには大きくなることはあるまい。一夜明けたら可愛い花嫁が鬼に変わったことに較べれば、カネで済んだだけまだましと考え、むしろここからは理性(残っているかな)を働かせる時だろう。 
 何時の時代も感情には理性で応じるのが賢いことは歴史が教えてくれているのではないだろうか。「賢者は歴史に学ぶ」とはいまのことなのだろう。