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プロフィール
キャピタル・パートナーズ証券
三原淳雄はキャピタルパートナーズ証券の顧問を務めています。
 

2009年07月16日
三原 淳雄

市場と世相
 

 市場はしばしば世相を写す鏡に譬えられるが、いまの東京市場を見ていると全くそうだなーと妙に納得したくなるのは悲しいことだ。 
 朝は前夜のNY市場の動きで上げたり下げたりでスタートし、その後今度はアジア市場の動向に左右されて動く姿を見ているとまるで日本の縮図そのものである。つまり全く自主性が見られない。よく国民の資質以上のリーダーは出てこないというが、政治がまったく機能していないのだから、相場がそれを反映したものになるのは当然だろう。 
 80年代の東京市場は世界の約4割ものシェアを持ち、日本の銀行の格付けはムーディズもSPもともにトリプルA、あわせて6Aを誇っていたものだ。そのため外国の市場の方が東京市場がどう動くかを気にしていたのだが、いまや攻守所を変え完全に主客転倒となってしまった。 
 悔しい限りだがこれも自ら招いたこと。嘆いてみても自ら変えなければ変わるはずもないのだが、それにつけても危機意識が見られないのは恐ろしいことだ。とくに本来国民の安全と財産を守るべき役割の政治家に全くそんな気があるように見えないのは、かつて子供のころいいようにソ連軍に踏みにじられた経験がある身としては、寒心に耐えないどころか夜中にふと考えたりすると震えが止まらなくなる。 
 今の日本にとって最も大切なものは安全保障のはずなのだが、現実に国の安全がじりじりと脅かされつつあるにも拘らず、与党も野党も自分の身の安全しか考えてないようにしか見えない。事実政治家の発言を聞いてもわが身可愛さばかりだし、マスコミの対応も国家の安全より政治家の発言を如何におちょくるかしか関心がない。その間にもミサイルは撃たれっぱなしだし、その隣の中国は着々と軍備を増強している。平和、平和と唱えていれば平和に過ごせた時代はとうの昔に終わり、アメリカだっていつ心変わりするかわかったものじゃない。 
 何処の国だって他国より自国の国益が大事なのは当然であり、メリットも無いのにリスクを取ってまで他国を守ってくれたりはしないだろう。いつまで平和惚けしていられるかぐらいはもう自分の頭で考えるべきではないのか。 
 政治が悪い、なっとらんと怒ってみてもそんな政治にしたのは国民全員の責任のはず。平成になって何人総理大臣が変わったか数えてみるといい.「純ちゃんと叫んだ私が馬鹿だった」という投書を新聞で見たことがあるが,反省だけならサルでも出来る。感情で動くから冷静な判断が出来なくなる。 
 ボケーとテレビをみてどう視聴者に受けるかしか考えていないコメンテターやお笑い芸人知事に振り回されている間にも、したたかな隣国の多くは人権など平気で踏み潰しながら国益や国力を伸ばしているのである。そんな日本の姿を象徴しているのが東京市場であり、自分の国の安全保障すら考えていない国に、カントリーリスクに敏感な本格的な投資が入って来ないのは当たり前だろう。 
 他人の動向で売買することを「チャブつく」と市場では言うが、他国の市場に振り回されてチャブつくしかない市場のいまの姿は日本の姿の反映と真摯に受け止め、市場からの警告として今後の国家運営をしっかり全員で考える時である。国家百年の大計という言葉があったような気がするが、これはもう死語になったのだろうか。 
 それにしても情けない政治屋ばかりをよくぞこれまで選んできたものだ。恥ずかしい。