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キャピタル・パートナーズ証券
三原淳雄はキャピタルパートナーズ証券の顧問を務めています。
 

2009年11月06日
三原 淳雄

またもバフェット
 

 バフェット氏は日本で言えばもうとうの昔に「後期高齢者」なのだが、依然として元気一杯、去年のリーマンショックにはすかさずゴールドマンとGEに投資し、ご案内の方も多いと思うが大きな成果をあげた。 
 それ以前にもいち早く中国のペトロチャイナや電気自動車の会社に投資して大儲けしたし、とても後期高齢者どころの話ではない。あまり年は違わないのに(彼のほうが5歳年上)、なぜかくも大きな差になったのか、同じようにアメリカで生まれたとしても同じような生き方が出来たか、といった他愛もないことを時々考えてみたりしているが、結局彼のようにはなれないにしても、せめて彼の考え方や人生哲学を書いてみたり話してみたりしか能が無いという結論になるのが毎度のこと。それぞれ人間は分相応でしか生きてはいけないのだろう。まあ自分の分際がわかって努力するのも悪い生き方ではない。僻まなくてすむし出来るひとには素直に敬意を表することも出きる。 
 バフェット氏には人格も才能もとてもとても及ぶものではない。だからアメリカでもオマハの賢人としてみんなから尊敬され、なかでも経営者にとってはぜひ株主になってもらいたいとどの経営者も願っているらしい。 
 あのゴールドマンですらリーマンショック時にぜひ株主になってほしいと頼み込んでなってもらったとか。結果はご案内の通りの大儲けにつながっているのだが、これもバフェット氏の持つ徳がそうさせるのだろうし、これこそ理想の経営者と株主の関係だろう。自分よし、相手よし、社会にとってもいいのだから言うことなしである。 
 そのバフェット氏、今度は驚いたことにオールドエコノミーの典型みたいな鉄道会社の100%株主になって話題を呼んでいる。この買収に際してはすでに20%強の株主だったバフェット氏に会社側から買収してくれと頼んだとか。バフェット氏は買収しても経営者を変えずに済むケースしか買収しないので、経営者にしてみればそれでOKが出れば自分たちが信用されているということでもある。つまり双方が尊敬しあっていたからこそ、すんなり買収できたとも言えるだろう。 
 もともとバフェット氏はキャッシュを生み続ける、どちらかといえばオールドエコノミーな企業を好む。キャッシュが継続的に入ってくれば再投資に回せるし、そのほうが結果として安定した投資が出来ると考えているからである。 
 一般的にここが目先の値上がりに期待し、成長企業を好む多くの投資家と違うところだろう。バフェット氏のビジネスには保険業もあるので整合性もあるし、またオバマ政権の目指すグリーンエコノミーの主旨にも沿う。一見奇異に思える時期に奇異に思える企業に投資してきた彼の歴史を見れば、今回もかなり勝算は大きいのだろう。やはり投資の要諦は「人のいく裏に道あり」ということなのだと改めて思わされた。 
 いまのように市場がチンタラしているときこそ、バフェット氏なら何を考えどう動くだろうと考えてみるのも悪くない。鳩山がどうの、小沢がどうのといったって、いまさら覆水盆に帰らないのだから、つまんないことを考えるならどうして自分はバフェットになれないんだと考えるほうが精神的にも前向きになれるだけましだろう。それにしてもたいしたおじさんだ。いくつまで生きるのだろう。