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プロフィール
キャピタル・パートナーズ証券
三原淳雄はキャピタルパートナーズ証券の顧問を務めています。
 

2009年11月20日
三原 淳雄

世界最後の社会主義国へ
 

 「鶏と馬鹿は風邪ひかぬ」という言葉を子供のころから何故か勝手に信じていて、自分はインフルエンザなど関係ないと勝手に気儘にここまで無事にやってきたが遂に悪運も尽きたのか、積年のツケが一気にきたのか、今年は何とも酷い目にあっている。39度を超える熱などこれまで経験してないからか、発熱していることに気がつかず、何だか足元がおかしいなと思ったときには手遅れで、顔面からつんのめり転倒した。それもこともあろうに新橋駅という間の悪さ。親切な人に助けられてやっとフラフラと立ち上がるという何ともしまらぬ次第となって、しばらくおとなしく臥せっていたが、その間にもわが日本は何だか酷いことになってきつつあるようだ。 
 民主党とは名ばかりで勝手に仕分けと称して人民裁判みたいなことを始めてみたり、その仕分けも初めに廃止ありきの感もある。ワイドショウと同じで予算のつじつま合わせのアリバイを作っているとしか思えないが、国家百年の大計など何処にも見られない。国会では肝心な党首討論もなしにいきなり亀井法案の強行採決をやってきた。この政権のばらばらぶりはまるで阿波踊りを見ているようだ。あの自民党も手が出せないほどの狼藉振りだから、まるで子供に権力をあたえて、世の中を滅茶苦茶にした何処かの国に似てきたようだ。 
 また閣僚も酷いのが多い。いやしくも資本主義の国なのだからマーケットに気を使うのは当然のはずなのだが、そういった初歩の意識が全く欠如している。自分の軽率な発言が大変な事態を招くぐらいの自覚ぐらいはあって然るべきで常識のはずなのだが、JALの法的処理について不要な発言を行って、瞬時に株価を大きく下落させるなど大臣失格だし、株主から訴えられるぞ。 
 また経産相はGDPの良い数字に浮かれたのか、守秘義務などお構いなしにペラペラと30分も前に漏らすなどまるで緊張感も見られない。自分の立場の重要性もわかってない。GDPの数値はうっかりすると為替から金利、株価など影響が各方面に及ぶ。だからこそ株式市場が開く直前の8時50分に発表される。エコノミストの皆さんもそこに焦点を当て全力を挙げて独自のレポートを用意し、満を持し解禁の時間を待っているのに、肝心な経済閣僚がペロっと嬉しそうに喋られたのではたまったものではあるまい。皆んなでまとまって厳重抗議でもしたらどうだろう。あれはあまりにも程度が低すぎる。あんなのが経産相をやっているようでは、危なっかしくて外国人はこんなインサイダー天国の日本には投資してこないのではないか。 
 もし自民党の大臣だったらマスコミなどそれこそ大騒ぎをしただろうに、妙に静かなのは、マスコミもことの重大さがわかっていないのかもしれない。麻生さんの言葉の読み違いよりはこちらの方が余程大事のはずなのに、JALの件もGDPも一過性のニュースで終わる。ことほどさように日本は何故か市場がらみの話になると大きなニュースでも全く無視されるきらいがある。 
 だから仕分け場の中継や総理大臣の虚ろな話に気を取られているうちに、日本株だけは世界とは逆には安値街道の一人旅といった何とも淋しい状況になってきた。海外市場は軒並み年初来高値をつけているのに、日本だけがひとり置いてきぼりで毎日富を減らしているのは何とも困ったことだ。 
 民主党もこれからあれこれ財源探しに大変になってくる。だったらまず国民を豊かにすることを考えるべきだ。アメリカはもう日本には愛想を尽かしただろうし、これからも米国債を買ってくれる中国に傾斜するに決まっている。だとしたら自分の足でしっかり立つしかない。仕分けで予算を削っても来年以降はどうなるか、そこが全く見えない。だから市場が気迷うのである。 
 必要なのは新しく富みをどう生み出すかであり、それには市場の活性化は何よりも必要である。その肝心な市場がいまほぼ機能不全に陥りつつあるのは憂慮に堪えない。このままでは今回の政権交代は後世に大きな悔いを残すのではないか。前の政権も酷かったけどここまで社会主義的ではなかったろう。今の中国は社会主義的市場経済と言うのだそうが、いまの日本は資本主義的社会主義経済という、世にも稀な世界でも珍しい変な国になったようだ。 
 そのうち世界中の国から「日本人には近づくな、社会主義が移る」と敬遠されるようになるのではないか。