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三原淳雄はキャピタルパートナーズ証券の顧問を務めています。
 

2009年11月27日
三原 淳雄

またしても“D“の字ラッシュ
 

 1999年に「悲劇は起こりつつあるかもしれない」(ダイヤモンド社)というタイトルの翻訳本を出した。原題は[JAPANESE CHALLENGES FOR THE 21CENTURY]、著者はJAPAN WATCHERとして知られていたDAVID ASHER、この彼が当時の日本を評してまとめたのが「5つのD」、デフレ、デット(負債)、デフオルト(債務不履行)、デレギュレーション(規制緩和)そしてデモグラフイ(少子高齢化)だった。 
 未踏の時代に入った日本経済はこの5つのDをどう克服していくかを提案したレポートを翻訳したのだが、また再びこの悪夢のような"D“の字が甦ってきたようだ。それも今回は国際的にまたがったDが多いのでかなり厄介なことになりそうである。 
 今回の“D”はまずデフレ、そしてDPJ(民主党)、ドル、ドバイ(これはかなり大ごとになりそうだ)、ダイルーシヨン(増資ラツシュ)それに鳩山政権の沖縄基地の迷走が日米間の安全保障を揺るがしかねないデイフエンス(防衛)懸念もあり、また鳩山家のドネーション(寄付)というも“D”あってDの字のオンパレードとなってきた。これに団塊の世代の大量退職が消費を下押しするという団塊のDを言う向きもあって、今回のDの字問題はなかなか厄介なものとなりそうである。 
 こんな言葉遊びでことで済んでいるうちはいいが、ドルの問題などはそうでなくとも円高で苦しんでいる日本経済の息の根を止めかねない動きになってきた。かてて加えていまいい気になってやっている仕分け作業も、何でも削ってしまうのが正義でやられてはかえって景気を下押しするだろうし、44兆円の国債発行額に拘っているうちに肝心な景気が悪化すれば、44兆円どころか結果として後になってもっと大量の国債発行を余儀なくされるのではないだろうか。前回の5つのDのなかでやっと債務が減って銀行も一息ついたところにリーマンショックがやってきて、自己資本の充実を図らなければならなくなったのに、またしても株価が下がり思うように増資も出来ないのでは、今回のデフレは前回より性質が悪いし、加えて前回の円高に較べて日本の体力が落ちているだけに悪い円高となる可能性も高い。とても生半可な伝統的な対策ではとても乗り切れないのではないか。何でもありの思い切った対策を出すべきだろう。 
 折から『坂の上の雲』がドラマ化されNHKで始まるようだが、明治以来必死になって坂を登ってきたのに『一番に何故ならなければならないのですか、2番では駄目ですか』なんて真顔で公言する馬鹿な国会議員が出てくるようでは、秋山兄弟が怒り狂って化けて出てきそうである。 
 折角世界一の経済大国となりやっと人並みの生活が出来始めたとたんに『一億総中流』が正しいとばかりに頑張る人の足を引っ張り、そして一気に坂を駆け下りて、いまや丘の上から見れば谷間に漂う視界不良の雲海に入ってしまったのが現状だろう。 
 一回は坂の上に登ったことがあるのだから、今度はそこに留まるにはどうするべきか、もう一度原点に戻って国のあり方を考え直すときだろう。それにはズラット並べた“D”の字を改めて検証し、総力を挙げて潰せるDを片っ端から潰していかなければ道は開けない。視界不良な現状から抜け出すためにも『世界一』を目指し坂の上の雲を追いかけようではないか。アメリカの強さはホームレスでも「WE ARE NO.1」と胸を張っていることである。不況にデフレ、そこに国民がニヒルになったのでは坂を上るのは容易なことではない。 
 ニヒルにはいつでもなれるのだから、やる気のある人には頑張ってもらえる仕組みを考える時だろう。それでも駄目ならいま悪人どもの間で流行っている国外へ逃亡と言う道もある。折角の円高、いろいろ考えてみるのも楽しいのではないだろうか。円高を利用して日本の報道では落ち込んでいるはずのデトロイトにでも出かけてみればいい。懲りないアメリカ人たちがピンチはチャンスとばかりに頑張っている姿を見ることが出来るはずである。