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プロフィール
キャピタル・パートナーズ証券
三原淳雄はキャピタルパートナーズ証券の顧問を務めています。
 

2009年12月11日
三原 淳雄

何か日本語がおかしくないか
 

 時として使われ方が気にいらないし大いに気になる言葉がある。さしずめいま最も気に入らないのは「〜させていただきまして」というへりくだった言い方である。ちんぴらタレントが「番組に出さしていただいて」という下手な日本語ならまだいいが、政治家までがそんな言葉を使うのは何かおかしいのではないか。 
 「おかげ様で選挙に勝つことが出来ました」が正しい言い方のはずだが「勝たせていただきまして」なんてやっているから地元の選挙民の目線ばかりが気になって、肝心な国の利益や国策が疎かになってしまう。 
 政治家には「ポリティシャン」と「ステージマン」の二通りあるが、本来国会議員は地元の利益よりは国の利益を優先する「ステーツマン」であるべきなのだが、どいつもこいつも小粒になって「勝たせていただきまして」とへり下るポリティシャンばかり。 
 選挙民も選挙民で本来なら地元になんか帰ってくるな、国会に留まって国のために働けと励ますのが、正しい国会議員への応援だと思うのだが、地元に顔を出し盆踊りを一緒に踊らなければ、次の選挙で落とすぞと脅す手合いが多い。 
 だから今回の事業仕分けの場では国益はそっちのけで、ぎゃあぎゃあ騒いでいるのは役人の無駄使いと天下りの追求という、まるで儲かるのか損するのかと言ったレベルの騒ぎになる。 
 もし採算がとれる事業ならさっさと民間に渡し、民間ではとても出来ない教育、文化、芸術そして未来への技術開発など将来への投資を行うのが国の役目だろう。それでもスパコンやオーケーストラに国の予算を出すのが厭というなら、民間からどしどし寄付を募り、そして全金額所得なり資産から控除すればいい。税収は減るだろうが将来の国のためにはその方が余程役に立つはず。 
 狭い日本国内ばかりで物ごとを判断するからそうなる。いまや日本の若い音楽家たちは日本では喰えずに海外でしか活躍出来ないのはおかしいのではないか。一流オーケストラのメンバーにやっとなれても、年収400万では文化国家とはとても言えまい。 
 ノーベル賞の受賞者たちや小澤征爾さんたち音楽家が怒り狂うはずである。これも「〜させていただきまして」という変に大衆に媚びる政治の姿勢がもたらした大弊害だろう。 
 こんなことをしているうちに、海外で賞を実力で獲る自信のある有能な人材は、みんな海外へ流出してしまうのではないか。 
 観光立国を目指すそうだが、古典的な伝統芸を育てずして、海外からの観光客に何を見せるつもりだ。ツーバイ フォーだらけの安物の家が並ぶ町並みを見に来る外国人がいるとはとても思えない。 
 税金の無駄使いはよく判った。それなら国民が自分で好きな文化や科学を応援できるような税制にすることだ。そうすれば学者や芸術家たちも「応援して下さったおかげで」となるだろう。これが正しい日本語の使い方であり、日本語すら正しく使えないポリティシャンにこれ以上この国を引っかき回して欲しくない。いまの自分の地位は自力で勝ち取ったくらいのプライドを持つのがステーツマンである。 
 吉田茂など昔の政治家はそれなりに気骨があったものだ。ちんぴらタレントと同じように「〜させていただきまして」とか「図らずも総理にさせていただきまして」なんて妙に国民に媚びる政治家はいなかった。正しいと思ったらたとえ百万を敵に回しても、信じた道を貫くのが国民の生命を預るステーツマンの仕事のはずである。まず言葉の重みを知ることだ。