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三原淳雄はキャピタルパートナーズ証券の顧問を務めています。
 

2010年03月19日
三原 淳雄

少年の大志はどこへ行った
 

 ハーバード大学の学長さんが訪日され、記者会見や鳩山首相にも面会されたそうだ。 小さな記事だったので見逃されがちだが、その小さな記事は僕には大きなショックだった。 
 
 かねてより日本の子供たちの「引き篭り」や「白らけ」が話題となっているが、ますます引っ込みつつあるようで、何と今年のハーバード大学に日本の子供はたった一人しか入学しなかったらしい。 
 学長さんは「日本の学生は留学するより日本の大学に通った方が将来的に有利と考えているようだ」とも発言されたそうだが、こんなことでいいのだろうか。 
 
 2050年には世界の人口は90億人になるのに対して、日本の人口は一億人を割る。人口の比率でパーティをやれば90人のなかに日本人はひとり。そんなパーティーで日本しか知らなくて大丈夫かと、そぞろ心配になるのだが、若い人たちは今にしか関心がないのだろうか。 
 日本からの留学生が減るなかで、韓国や中国からの留学生は増えていると学長さんは心配してくれているようだが、もっと日本も心配すべきだろう。 
 
 交通標語に「狭い日本 そんなに急いで何処へ行く」と、スピードの出し過ぎを諌めるものがあったが、その通りで日本は狭い。 
 しかしその狭い日本にも大気汚染やインフルエンザなどは、世界中からアッと言う間に押し寄せてくる。外国の事情も知らずにどうやって生き残っていくつもりなのだろうか。 
 いまは幸い若者たちの親がそこそこ稼いで貯めているだろうから、のんびり「引き篭り」や「内向き指向」でやっていけるだろうが、何れ親はいなくなり貯えも底をつく。競争社会は厭らしいが、こちらの事情なんてお構いなく世界は変わっていくし、目をギラギラさせた若者は世界のどこからでも出てくる。 
 
 人生は三万日(82歳と50日)とよく言われるが、人間に与えられた時間は有限である。せめて限られた時間の中味を濃くしたいと考えて欲しいのだが、若い人たちは永遠に若さが続き、親も死なずに働いて養ってくれると考えているのかも知れないが、そんな夢みたいな話などあるわけもない。 
 
 またぞろ週刊誌などは東大合格者出身校ランキングに血道をあげているが、世界の大学も入れてみたらどうだ。ついでに日本の大学の世界でのランキングも載せる時だろう。各国の有名大学の日本人合格者リストでもいい。 
 
 そう言えば2年ほど前に友人の息子がスタンフォード大学のMBAコースに留学した。 在学中に司法試験に受かるほどの大秀才だが、その後日本の弁護士事務所に勤めた。しかしこれからはやはり世界を知らなくてはとスタンフォードに留学したら日本人はたった3人だったとか。彼の父親もスフォード大学のMBAだが、父親の時代には日本からの留学生は20人を超えていたことを考えると昔日の感がある。 
 
 北大を創設したあのクラーク博士の「少年よ大志を抱け」に子供心に大いに触発されたものだが、どうやら大志などという言葉もいまの日本では死語になり、小康に甘んじるのが主流になったようだ。アメリカの大学は日本と異なり独自のポリシーで学生を入れる傾向がある。昔ならとても入れなかったハーバードなど難関校が日本人不足で困っているなら、逆張りでいまは狙い目ではないだろうか。 
 しかも昔とは異なり奨学金制度も内外で増えているはずだから、大志とまでは言わないが、日本人留学生不足をチャンスに変えてみるぐらいの志があってもいいのではと、つい苦労に苦労を重ねた貧しい留学生だった身としてはそう思うのだが、無いものねだりだろうか。 
 
 ちなみにこれまでハーバード大を卒業した日本人は累計で約3000人とか。また80年代には日本人の教授も広中さんを始め各科で頑張っていた。 
 衣食足りて礼節を忘れ、チャンレンジすることも忘れてしまったようで寂しい限りである。日本の存在感がどんどん薄れていく姿はこうしたことにもよく表れているようだ。