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三原淳雄はキャピタルパートナーズ証券の顧問を務めています。
 

2010年04月10日
三原 淳雄

ルンビニ雑記
 

 初めてネパールに行ってきた。ヒマラヤ山脈のトレッキングは日本でもよく知られているし、友人たちの何人かは既に行っているが、今回はトレッキングではなくヒマラヤとは反対のインド国境近くにある辺鄙な小さな町、お釈迦様生誕の地として世界遺産に指定されているルンビニに行ってきた。 
 
 カトマンズから小さな飛行機に乗り換えて30分あまり、1300米の高地から平地に向って降りる形になる。温度は日中35度を超えるがドライなので汗は出ない。しかし東京との温度差は30度、老体にはかなりこたえた。 
 今回は友人(日本人)がその地に18年もの年月と数々の試練を越えて建てたホテルの見学が主目的であり、ビジネスやマーケットとは全く関係のない生まれて初めてのフリーな旅。 
 
 もちろん情報などはフロントにあるPCでしか知ることは出来ないので、外界で何が起きても知りようがない。馴れとは恐ろしいもので2~3日もすると、情報漬けの日常が当たり前の身としては、当初は不安だったものの現地の人たちの暮らしを見るにつけ、情報過多でバタバタしているのも人生、全く関心を持たずに身辺のみの情報だけの人生、どちらがいいのだろうかと、しばし考えもした。 
 
 せっかちな日常が当たり前、充分に恵まれているのに募る不満も当たり前という日本に慣れた目で見ると、ホテルを建てるのに18年、世界遺産の地域開発のプログラムが出来て30年も経つのにまだ道半ば、あの丹下健三さんがわざわざやって来て、立派なプランも出来ているのだが、いつ完成するのやら誰も正確には知らないという世界がむしろ新鮮に思えてくる。 
 
 周辺には各国が寺院を作っているが、こちらのスピードは早い。ドイツ寺院は既に立派過ぎるほど絢爛豪華だし、中国、インド、スリランカ、タイ、ベトナム、カンボジアなども競ってお寺を建てている。 
 リチャード ギアもチベット支援の途中で立ち寄ったとかでタイのお寺には彼の写真が飾ってあった。ヒマラヤの反対側は中国とあって、このところ中国の進出はここでも著しいようで、そのうちカトマンズには中華街が出来るのではないかと、かの地の人たちは噂していた。 
 
 日本からはこの「ホテル笠井」の他に妙法寺というお寺が独自で立派な「平和の塔」を建て、日本からも若いお坊さんが早朝から太鼓を叩いてお祈りをしていた。聞けば四時間以上もかけて近隣も回っているとか。日本の若者も捨てたものではない。 
 
 お釈迦様の生誕地を中心に縦3マイル、横1マイルの地域が世界遺産。そこはよく整備されつつあるが、一歩その地域を出ると昔ながらの農村地帯が広がり、のんびり牛が歩いている汚い道を馬鹿でかいトラックが走っているし、日本ならとうの昔にクレームで大騒ぎになるようなボロ車が道端で横転していたりと、日本の往時を偲ばせる風景も目にした。 
 
 日本は国境が海で隔てられているためか、他の国の加工されて入ってくる情報を鵜呑みにしているため、いま格差をどうすると騒いでいるが、他国が凄いスピードで変わっていることに気付かないようだ。バンコクではベントレーがショッピングセンターで約一億円(日本の3倍)で売られているかと思うと、散髪代が30円という世界も同居しているのだから日本の格差どころの話ではない。これでは世界の変化に背を向けた引き篭り日本と呼ばれるのも無理はないだろう。 
 
 立ち寄ったバンコック空港の賑わい振りと、成田のそれとでも勢いに大きな差を感じてきた。 たった一週間だったが久しぶりの新興国訪問は限りなく刺激に満ちたものになった。 豊かさとは何か、恵まれるとはどういうことか、改めて原点から考えさせられている 
 
PS:バンコックのあの赤シャツ隊の日当は50円という話も聞いた。道理でのんびりやっているはずだ。