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キャピタル・パートナーズ証券
三原淳雄はキャピタルパートナーズ証券の顧問を務めています。
 

2010年06月11日
三原 淳雄

「最小不幸」? 最大幸福ではないのか?
 

 言葉は大切である。地位が高ければ高いほど、言葉の重さも増加する。市場でも「マイ ワード イズ ボンド」と言われるように、売買の成約はネット以前の時代は殆ど電話でのやりとり。それで巨額な商いが行われるのが慣習だったし、違約すればたちまち市場から追放されるという厳罰が普通だった。 
 
 いまでもユダヤ人を中心として行われているダイヤモンドの取引きは言葉がベースであり、黒一色の衣装をまとったブローカーたちが薬包にも似た紙袋に入ったダイヤを、かざしたりすかしたり、虫眼鏡で調べたりして取引をしているが、万が一決済が遅れたりすると、たちまち世界中の市場にお触れが回り、アントワープやテルアビブなど全ての市場から追い出されることになる。 
 
 ところが日本のように法律だ、条令だ、規制が増えてくると、言葉よりも「読んだのか、了解したのか」という紙切れの方が重要となり、おまけに署名捺印までしなければ市場に参加出来なくなった。 そのため「市場にはリスクがある」「それが厭なら入ってくるな」という原理原則が忘れられ、言葉の意味が軽くなったのではないだろうか。 
 
 好例が菅首相の唱える「最小不幸の社会」だろう。一国のトップの言葉としては如何にも軽く、何を言っているのかよく判らん。 
 不幸とか幸福とかは物差しで計れるものではないだろう。貧しくとも教養を高め、尊敬されることで幸福と思う人もいるだろうし、巨万の富を抱えていても、様々な問題を抱えていて不幸な人もいるだろう。 
 
 最小不幸なんて怪しげな言葉で国民を騙すのは止めて欲しいものだ。どうせ言うのなら「最大幸福」を名指すとか「世界一豊かな国」にすると言うのがトップの役目ではないのか。 
 もう既に生活保護を受けている家庭が127万世帯にもなるとか。まさか「最小不幸」とは生活保護のことではないと思うが、生活保護を受けている家庭が「最小不幸」だと考えたりするようなムードになれば、むしろ逆効果だろう。 
 
 悲観論が好きな国だから、ギリシャなどの問題が起きるとすぐ日本もそうなる的なムードになるが、こうした悲観論を払拭するのが政府の仕事のはずである。 何故もっと胸を張らないのだ。いまでも日本は世界で1,2を争う債権国であるという事実を国民に知らせ、もっと国民に元気を出して貰えば、この国はまだまだよくなるはずである。 
 
 財政赤字という巨額な借用書もある一方で、対外債権保有では世界一、国債を保有している民間は、それだけの国への貸付証書も持っていることも教えるといい。 
 国民を元気にしたいのなら、市場を大きくすることだ。株式市場の活性化などすぐにでも出来るだろう。規制、制度、税制を見直し、「こっちの水は甘いぞ」と世界中の優良企業を呼び込み上場させ、優秀な外国人がどんどん日本に来るようになれば、東証の時価総額もたちまち跳ね上がる。東証の時価総額が1000兆円にでもなれば、国債による負債と市場の富とイーブンになるから、孫、子にも「借金も残すけど資産も残したぞ」と言えるではないか。 
 
 いま日本が目指すべきは「最小不幸」ではなく「最大幸福」への成長路線なのではないか、言葉が余りにも軽く大衆に阿ね過ぎるのもいい加減にして欲しいものだ。