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プロフィール
キャピタル・パートナーズ証券
三原淳雄はキャピタルパートナーズ証券の顧問を務めています。
 

2010年08月27日
三原 淳雄

最強の通貨、最弱な株価
 

 株のことなど何もしらずに22歳で証券会社に、ただ食い扶持を得るために就職、おふくろからは「とうとう家から株屋が出たか」と嘆かれてはや50年経った。 
 優秀でよくお勉強が出来る連中は繊維会社や炭鉱へ、そこそこで真面目な連中は銀行や電力会社へ、証券会社に行くのはお出来の悪い遊び人というのが当時の世相。 
 東証の時価総額は1兆円強、日経平均は3〜400円だったのだから、資本市場とは名ばかりで間接金融花盛り「銀行員なら嫁にやろう」と言われるぐらい銀行もお固い時代だった。 
 いまを時めく公務員も当時は安月給の見本みたいな扱いで、上級職以外には出来のいい学生はあまり行かなかったのではなかったかな。 
 
 だから当時の上級職の役人は志に燃えていた。それこそ「滅私奉公」の精神がこちらにも伝わってくるほどの気概のある人も多かった。「カネより遣り甲斐」だったのだろう。「政治家は駄目でも官僚がしっかりしているから日本は大丈夫」と思わせてくれたものである。 
 
 あれから50年。日本は大きく変わってきた。貧乏だった日本が豊かになり、欠食児童だった連中がいまやグルメ自慢。テレビはグルメ番組花盛りといった贅沢ぶりだが、そのなかにそこはかと漂う虚無感を感じるのは何故だろう。 
 セミナーなどの出席者に聞くと「先が見えてないから不安」「老後が心配で夜も眠れない」など、一見余裕がありそうな人でも判でおしたような答えが返ってくることが多い。 
 
 おかしな話である。いつの時代も先など読める人はそうザラにはいるまい。 
 その先が不安な連中が、それこそ先など全く読めない奴を選挙で国会議員などにするから、変な財務大臣が出てきて訳の分からぬコメントを出し、市場からたちまち見透かされてバカにされ市場に翻弄される羽目になる。 
 
 通貨は最強、国民の大切な財産である株は最弱なのは国政を預る連中が全くの経済音痴に加え、先を切り拓こうという努力をしていないからではないか。 
 その昔池田総理がまだ蔵相だった時に「貧乏人は麦を喰え」とやってごうごうたる非難を浴びたが、彼の真意は麦飯が厭なら頑張って米のメシを喰う努力をしろということであり、その後「所得倍増論」を打ち出して見事に先行きを示したという例もある。 
 
 このひそみにならっていまやるべきことは「通貨も最強、株も最強」と国民が胸を張れる国になるような政策を打ち出すことだろう。 
 「資産倍増計画」など判り易くていいのではないか。政官民一体となってもっとお金持ちになる政策を皆んなで考えようではないか。金持ち優遇は怪しからんなんて寝言にも似た小さな正論もどきを棚に上げ、皆んなで金持ちになって然るべきだろう。 
 
 通貨が強くなって潰れた国はない。介入してでも通貨を下げろの大合唱しか能がないのではいつまでたっても体質は変えられまい。いまこそ昭和天皇の敗戦時のお言葉「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」、妬みや嫉妬を抑え、頑張って資産を増やす人を応援しようではないか。 
 東証も証券会社も銀行も一致団結して国富倍増策を打ち出したらどうだ。我が身だけ心配している時でもないだろう。 
 お客さんをどうすれば豊かにすることが出来るか。頭が壊れるほど考えて欲しい。 
 輸出という「売るビジネス」ばかりを考えるのではなく、強い通貨を利用して買うビジネスを考えてはどうだろう。アメリカの住宅もドルも下がっているのなら、ビバリーヒルズを買い占めてジャパンタウンにするのも面白いのではないだろうか。