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プロフィール
キャピタル・パートナーズ証券
三原淳雄はキャピタルパートナーズ証券の顧問を務めています。
 

2010年09月24日
三原 淳雄

名目と実質
 

 その昔月給が毎年のように大きく上がっていった。一万五千円の初任給が翌年は一万七千円、その次は一万九千円といった具合に上がっていった。一万五千円で入社した身としては新入社員より常に高くなる計算で上がったから、あっと言う間に二万円台になるまで上昇した。 
 
 ところが物価はもっと早いスピードで上がっていったからおかげで名目成長率と実質成長率の違いを肌で感じることが出来た。名目賃金は上がっても暮らしの内容は伸び並み、会社は月給を上げてやったと恩に着せるけど、生活実感は少しも変わらんとぼやいたものだ。 
 先ごろ亡くなったクレージーキャッツの谷啓さんたちの映画を見に行っては「サラリーマンは気楽な家業と来たもんだ」というふざけた歌詞に(作詞は青島幸男かな)、冗談じゃない大変なんだと、スクリーンに向ってよくブーたれていたこともある。 
 
 それがいまは正に逆になり、実質GDPより名目成長率が低くなってきた。 
 名目成長率が実質成長率を上回っている時代にはカネを眠らしておく手はない。カネがあれば、またはなければ借りてでも株や土地などといった資産に注ぎ込む。したがってカネは天下の回り物の機能を果たし、新たな信用創造につながり乗数効果も大きい。(菅さん、もう判ったかな) 
 
 ところがいまや逆、名目GDPはこの20年間全く増えていないのだから、カネなどうっかり回したら、リスクのみ高くリターンの期待が少ない。かくてカネは天下の回りもののはずのカネが、全く回らず、金利もつかないところに逃げ込んでしまう。 
 
 東洋経済の最新号を読んでいたら、この20年でアメリカは名目で2.46倍、あのイギリスですら2.45倍、ドイツも1.89倍と、ちゃんと名目GDPを増やしているのだから、これはもう政府の怠慢、何でも国頼りの国民の甘えとしか言いようがない。 
 いくら菅さんが「一にも二にも三にも雇用」なんて叫んでも、名目成長率が伸びなければ企業は経費削減、給料カットなどで縮小しながら利益を出すしかないという事実は知っておく方がいい。

本当に恐い話

 かねてより「どうも生まれた国を間違えたようだ」と思っていたが、今回の検察の騒ぎを見て、ますます恐ろしくなってきた。 
 市場でちょっと飛んだり跳ねたりした村上ファンドが何故か些細な理由で捕まり、これはやり過ぎではと感じていたが、目をつけられたら最後、何が何でも起訴するぞ、吐かなければいつまでも入れておくぞ、そのためには俺たちは何が何でも起訴するぞと、初めに起訴ありきなのだから、これは恐ろしいことだ。 
 おまけに起訴されたら最後100%近くの確率で有罪となるのだから、国民たるものおちおち交通違反も出来ないのではないか。先方が捕まえる気になったら何が何でも捕まえるのでは、戦前の日本の特高警察、ナチスのゲシュタボと同じで、弁護士などに頼っていても余程強い人でなければ、身の潔白を証明するのは難しい。 
 村木元局長は本当の肝の据わった珍しい人物である。彼女のおかげで如何に検察が恐ろしいか、権力を乱用するかがよく判った。 
 
 オンナの噂もそうだが、何かあったのならともかく、何もないのにあったという噂ほど始末に終えないものはない。 
教訓 その1 
 「ないものはない。しかしあるとされたら、ないという証明など出来るはずもない」 
教訓 その2 
 マイケル サンデル教授ではないが、正義とは何か、これほど厄介なものはない。 
教訓 その3 
 「君子危うきに近寄らず」 カネと女に無縁な人生か。 
 
つまらん時代になってものだ。