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三原淳雄はキャピタルパートナーズ証券の顧問を務めています。
 
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2010年09月10日
三原 淳雄

東京東海ウィークリー : 巻頭言(月第一週連載)
 

円高は悪なのか

 円高はあたかも国難のようにマスコミは騒ぐが、ものごとには全て両面があることを忘れているのではないだろうか。 
 どの市場もそうだが相場は「売り」と「買い」の双方があることで成り立つ。 
 株式も売りがなければ買えないし、買いがなければ売りも出来ない。 
 為替市場ももちろん同じである。 
 売りか買いかを判断するには幾多の考え方があるからであり、考えが異なる人々によって市場は成り立つのだが、昨今の円高に対するマスコミの見方は、何故か円高被害のみを言い立てているように思えてならないのである。資産の殆どを円で保有する日本にとって、円の値上がりは資産価値の上昇となるのだから、日本のように資源の乏しい国にとってはプラス面も大きい。かつての日本経済は輸出依存限度が高く、また輸出に最適な規格型工業製品の大量生産がお家芸だったこともあって、円高はメリットよりもマイナスの方が大きかったのだが、いまはGDPに輸出の占める割合は16%前後であり、個人金融資産の1450兆円、企業の内部留保の厚さなどを考えると円高のメリットも大きいはずである。 
 ビジネスにも「売るビジネス」と「買うビジネス」がある。輸出が売るビジネスだとすれば輸入や対外投資は買うビジネスであり、折角の円高なのだから、売るビジネスのデメリットのみを声高に騒ぐのではなく、買うビジネスについても真剣に考える時なのではないだろうか。価値を大きく増した日本円を利用して、海外企業を買うとか、高い円で安くなった優良資産を有利に買うチャンスのはずである。 
 1980年後半の円高では、NYなどのビルを大いに買ったものだが、残念なことに高値つかみとなり大損を出したことがあるが、いまの状況は当時とは全く異なる。 
 「羹に懲りて膾を吹いている」ばかりではなく、買うビジネスにとってチャンスは大きいと考えたい。 

日米資産市場の違い

 1971年のニクソンショックから40年、その間円は四倍、ドルは四分の一になった。どうにも解せないのはこれほどにも強くなった円なら、日本は本来もっと豊かになっていて然るべきなのだが、何故か実感にかけるのは株や不動産と言った資産市場の違いにあるのではないだろうか。 
 40年前には、1000ドル弱だったNYダウは1万ドル台へと十倍の値上がりとなっているし、同じく二万五千ドル前後だった住宅価格はサブプライムショック後でもまだ25万ドルは超えているらしい。これも少なくとも十倍以上である。 
 一方4倍にも強くなった円を持つ日本だが、日経平均は高値からアメリカとは逆にまだ四分の一以下だし、住宅や不動産もバブル以前の価格に戻ったまま動かない。 
 そこはかとなく聞こえてくる「先行き不安」や「老後が心配」といった日本の虚脱感の原因の一つは資産市場が活力に欠けているからだろう。資産市場を活性化することが出来れば消費も活発になるし、GDPの需給ギャップも縮まりデフレからも抜け出せる。おまけに税収も増えるだろう。 
 何故資産市場に目を向けもっと時価総額を大きくしないのか、不思議な国ではある